革製品が好きでした。
初めて意識的に革製品を買ったのは、お金が無いのに、どうしても欲しくて、すこしづつ貯めた貯金で買った長財布でした。
レジや券売機など、財布を使う場面ではホクホクした気分で財布を使っていました。
家の中でも財布内の模様替えとでもいうように、カードの配置を変えたり、
革を折り曲げた時に現れる、光の反射具合を眺めたりなどして楽しんでいました。
とにかく、その時は革製品をたくさん自分の手元に置いて楽しみたい、そんな気持ちでした。
革製品との向き合い方は作り手としてではなく、受け取る側でした。
それが何の拍子に作り手になったのか。
それは、ある日ホームセンターで見つけた革小物製作キットでした。
そのキットは、革の裁断以外のほぼ全工程を購入者が行うように作られており、
なにか大掛かりな機械が無くても、革財布を作れるようになっているものでした。
そのキットを、説明書を見ながら作っていくものの、作業を効率的に行うような道筋だった知識もなく、
道具もあり合わせのものを使って、行き当たりばったり的に作業を行うので、
完成までに2週間ほどかかったんじゃないかと思います。
最終的に出来上がったものは、それなりに悪くない出来栄えのものだったと記憶しています。
それを完成させたときに、道は決まったようでした。
自分でも出来るし、やってみたい。
当時は、ぶらぶらと過ごし、やりたいことも特になく、
しかし若さゆえのエネルギーの充満を大いに感じている時期で、
何か面白いことがあればすぐに飛びつくよう、気持ちの準備だけは万全だったようで、
そこにぴったりはまった感覚でした。
それからはこつこつ貯めたお金で買った革を使い、いろんな形のものを作り続けました。
鞄、財布、カードケース、ベルト、その他諸々、とにかく手がだせる範囲で出来ることは全部やったような気がします。
作る物の、デザインも使い勝手も何もかも、誰かの模倣ばかりでしたが、それはそれでとても楽しい時間で、
とにかく目に付く技法は全て出来るようになろう、そんな気持ちでがむしゃらにやっていました。
井の中の蛙的ですが、誰よりも深い知識と高い技術を持ってやろう、と思っていました。
今思うと、ものすごい無鉄砲ぶりですが、当時は相当本気で思っていたようです。
グチャグチャの頭のなかと、散らかった机の上で、とっても楽しい作業に没頭し、
やりたいことを見つけた喜びで充実した日々を過ごしながらも、
さらなる知識と技術を求めて渇望状態でした。
当時はフリーターをしながら空いた時間で革に向き合っていたので、
どうしても本職でやっている人とは差が埋まらないという感覚、焦りがありました。
そんなときに、どこで見つけたのか、ドイツにはそんな僕にぴったりの制度があるというのを発見しました。
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